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2009年8月5日水曜日

雷神の系譜/SOUND HORIZON

「世界を救いし隻腕の英雄亡き後。

邪神が封印されし地に街を築き、

自らが結界の役割を果たし、

永き平和への礎と成す…」


「誇り高き右腕に刻まれし雷の紋章。

彼の者達の名は雷神の民。

伝承の謎。紋章の秘密。

少年が描く軌跡。雷神の系譜」


弱い者ほど徒党を組み

身代わりの羊を捜す

愛を知らない幼き日々は

灼けた石の痛み


ひとり唇噤んだまま

膝を抱えて耐えていた

雨も宿ればいづれ過ぎ去る

嵐もまた然り


されど輝やかざる紋章

本当の強さって何だろう?

差し出された少女の小さな手が

とても大きく見えた…


「黙したまま何も語らぬ歴史の手の平の上で、

出会ってしまった少年と少女の物語。

十年の歳月も一閃の雷が如く。

過ぎ去ってしまえば刹那。

今…黒の歴史が再び動き出そうとしている…」


遠い空見上げて この胸を焦がす

浮かぶのは彼女の 愛らしい笑顔だけ

適わぬ想いと 識っていながら…


麗しの君は何故 一族の長の娘

部族一強き者の許へ

嫁ぐこと定めしは 変えられぬ民の掟


嗚呼…雷無きこの腕じゃ 君のこと護れない?

想いなら誰にも負けないと

叫んでもその言葉 虚しくも風に消えた…


「期は満ちようとしていた。長の娘も今年で婚礼を定められし齢十六。

その誕生の日が差し迫り、一族の猛者達は競って名乗りを上げた。

期は満ちようとしていた。邪悪なる波動が街全体を包み込み、

空に立ち込めたる暗雲は<三度目の嵐>の訪れを告げようとしていた…」


「おぉ…何ということじゃ…!黒き法衣を纏いし者達の影が見える…

予言書の使徒、奴らを封印の深奥へ行かせてはならん。

邪神の封印を解こうとしておるのじゃ…!

いまや雷神様も血も薄れ、我らに扱えるは小さき雷のみ…

あぁ恐ろしや…!天地を揺るがす強大な力じゃ…来るぞ…あぁ来るぞ…!」


「地を割る咆哮。天を裂く爪牙。烈火の如く燃えさかる六対の翼。

暗黒を宿した瞳に魅いられただけで、勇猛なる戦士が次々と倒れていった…

嗚呼…人間とは神の前では、かくも無力なモノなのだろうか…

誰もが深い絶望に呑まれかけていたその瞬間、

一際眩い閃光が雷無き青年の体を貫いた…」


「覚醒めよ…勇敢なる右腕を持つ者よ…

直系の雷を受け継ぎし者よ…

かつて私は邪神を封印せし折、雷の槍を放ったが故右腕を失った…

今その雷を開放すれば、右腕はおろか全身が吹き飛ぶやも知れぬ…

御主にその覚悟があるか?

…ならば今こそ覚醒めよ<雷神の右腕>よ!」


「ひとりでは耐え切れぬ雷でもきっと、ふたりなら大丈夫私は信じる!」

暗雲を貫く雷 あの日出会った少年と少女は

今…二つの紋章重ね合わせて 輝ける未来を紡ぐ…


「…ちゃん…ねえ…お婆ちゃん…お婆ちゃんったらぁ!

どうしたの?それからお話どうなったの?」

「おお…そうだったねえ、ごめんよ。」

「その後、雷神様が邪神をやっつけたんだよね?ね?」

「さて、どうだったかねえ…昔の話だからもう忘れちゃったねえ…」

「えー、そんなのずるいよぉ。」


「…そう言って微笑んだ祖母の瞳は、とても優しい色をしていた。

…その時の事は今でも印象深く覚えている。

…私は信じているのだ。雷神の系譜は途絶えていないのだと…」


「受け継がれるモノ…受け継がれざるモノ…

暗雲を貫く光を翼に受け…その白鴉は羽ばたいて往く…」

辿り着く歌/SOUND HORIZON

「第九巻 883ページ...」


「盲目の詩人、ルーナは静かに唇を開いた...

これより歌うは...ある娘が大切なモノに辿りつく迄の詩。

苛酷な旅よ。困難な途よ。それでも娘は決して諦めなかった。

物語は運命を呪うより、苦しくとも詩い続ける途を選ぶ。

いずれ歴史が全てを葬りさろうとも、今は唯...瞳を閉じて聴いておくれ」


愛しい人よ アナタは何処に

手掛かりひとつなく

孤独な旅の 道連れの詩は

遠い空へ 霞んで消えた


天堕つる雨 手の平に

零れ落ちた雫...


幾つもの深い森を抜けて 険しい山を越え

町から街へ 知人から他人へと

想い人を 尋ね歩いた


天翔ける追想 星空に

誓った接吻(やくそく)は...


「嗚呼...エンディミオ...」


虚ろな世界を 夕闇が包み込む

帰れぬ私は 独り何処へ往く


「予言書が肯定する史実。争いの歴史。

戦禍という名の爪痕。大地を灼き尽くす焔。

家族...恋人...愛する者の消息も知れず。

多くの者達が為す術もなく引き裂かれた時代」


「娘の旅は道連れとなった詩を遡るように、

とある城で牢番をしていたと言う男へ。

そして...推測から確信へと辿りついてしまった。

切なくも懐かしき調べ。その詩を綴ったのは...」


挫けそうな私をいつも支えてくれたのは

恋人が最期に遺してくれた この名も無き詩よ


「運命よ...例えお前が瞳から光を奪い去ろうとも、この唇からは詩を奪えない...」


辿りつく詩は 夕闇に陽を灯し

枯れてなお花は 凛と其処に咲く


嗚呼...吹き荒れる悲しみの...

嵐が訪れ 全て薙ぎ倒しても

大切なモノは 絶えず此処に在る


「──大切な人に 辿りつく詩」

君よ...大切なモノに辿りつく途を見つけたら もう迷うことなかれ


「──大切な人に 辿りつく詩」

例え茨の途であろうとも 歌をくちずさめばそれもまた楽し


「──大切な人の 辿りつく詩」

詩えない人生になど 意味はないのだから...


「──大切な人の 辿りつく詩」


大切なモノへと...辿りつく場所へと...

「白鴉が目指す地平...あの空の向こうへ...」