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2009年8月3日月曜日

物語の消えた森/少女病-空導ノスタルジア

「夢から覚めるように覚醒する意識。

長い時間眠っていたような不思議な感覚が残る中―――

少女はゆっくりと体を起こす」


「私は、どうして…」


「―――この大剣は、なに?」


空白の時 歩むべき道を探して

闇色に 奏で散る波の音色

痛みの欠片 触れたか細い指先は

悴んだ 心まで凍る程に


生きることさえ 重い十字を抱きし苦しみ

深い孤独と悪夢に抗う


虚空に投げた 不遜な感情

神をも殺す幻想

すべてを燃やす儚い焔は

遠い記憶に焦がれて

『大剣を取れ、罪を滅せよ』


「空洞の私にできることは、ただ前を向いて歩き続けることだけ」


「――――絶対に、負けないから」


「すべての記憶は失われ、再び覚えのない罪の幻影を斬り続ける日々がはじまる。

何度でも、果てなく繰り返される悪夢。

赦しを得ることもなく、死ぬことさえ叶わない。

空導の姫君にかけられた呪いは、永遠に少女を解放することなく…。

ただ、残酷に時を描き続ける―――」


燃え尽き果てる 燻る魂の残光

夕凪は 玲瓏に時を紡ぐ


生きてゆくなら 重い十字をいつしか降ろして

罪に塗れた悪夢を消したい


寂滅の詩 空虚な衝動

神をも堕とす空想

すべてを照らし揺らめく焔は

失くした過去に焦がれて

『大剣を取れ、罪を滅せよ』

『さぁ、呪われし姫よ――――』


「それは、若く美しい姫に嫉妬した魔女による呪い。

囚われた姫は、静かな森の奥深く眠り続ける。

苦痛に満ちた表情で、耐えるように。

少女は、本当は何も罪を犯してなどいなかった。

唯一罪があったとするならばそれは、そのあまりにも麗しい姿で―――――」


「―――ねぇ、助けて」

寂滅フレアー/少女病-空導ノスタルジア

「無言の森に、少女を嘲笑う声が響く。

幻と現実の混濁は、いつ始まったものだっただろう。

声なき声で紡がれる、新しい歌。

今はその旋律すらも、ひとつの罪の形にさえ思えて…。

多分それは、終わりのはじまり。

崩れ落ちていく生命の、最期の煌き―――」


幾つもの罪の姿 幻影は形を変えて

浅い眠りも叶わぬ程 時を問わず少女に触れた


「ねぇ、何故殺したの?」

なんて訊かれたって何も知らないのに


失われた記憶の闇

朽ちゆく過去の残滓は謡う

過ぎし日々を鮮やかに映して

埋葬された悪夢は終わらない―――


色褪せた星空でも 寂しさを紛らわせてた

淡い光が孤独な影 際立たせる罰だとしても


「どうして、泣いてるの?」

なんて訊かれるまで涙気付かなくて


無数の悪夢 無数の罪

愚かな救い難き過ち

零れる雫(tear) 深紅に染まりゆく

赦しを求む祈り 届かずに―――


「…眠りたいの?このまま」

罪から逃れて 眩しい光の先へ


far away 記憶の闇

朽ちゆく過去の残滓は謡う

過ぎし日々を鮮やかに映して

埋葬された悪夢は―――


絶え間なく繰り返す 愚かな救い難き過ち

零れる雫 深紅に染まりゆく

赦しを求む祈り 届かずに――――


「少女は耐えきれず、罪に罪を重ねた自らの体に刃を当てる。

それで罪が贖えるのなら、辛い日々から逃れられるのなら、

死は優しいものだとさえ思えて…」


「――――――これで、全部終わりにするから」

refrain/少女病-空導ノスタルジア

「空導の姫君と呼ばれる、見目麗しい少女がいた。

記憶を失くしたその少女が過去に犯したとされる、身に覚えのない罪や過ち。

そのひとつひとつが形ある幻影となり、彼女に深い苦痛を与えた。

――知らない歌を口ずさむように。

――息をするようにそれらのモノを斬り、空へと導いていく。

数え切れないほどに繰り返しても、終わることなく現れ続ける罪の幻」


「瞳に宿る虚飾の蒼―――。

無数の死の上に立ち、不可視の枷に閉ざされた少女。

螺旋は旋律のように――。廻り続ける砂礫の悪夢(エフィアルデス)」


罪は絶えず 虚ろな影を揺らす

砂礫混じりの風 運ぶのは終の少女(イヴリィ)


小さな体躯 背負いし刃は贖罪を

果たすために振るう 全てを断ち切るまで


遥か空導く 天壌無窮の宿命

終わらない悪夢の調べ(エフィアルテ)

彷徨い紡ぎゆく 空導の姫君


翳る瞳に届かぬ願いを刻んで

夜空に響く 咆哮は哀しき歌声のように(アリオン)

すべてが始まる場所は欠けた記憶の海

探し続ける 笑顔取り戻すまで


脆く歪んだセカイに

閉ざされた 誓い仄蒼く――


欠けた罪を葬ることは不意に

大切なものまで喪い失くすようで…


畏れ怯えた小さな少女は勇ましく

心折れぬように前を見据え続けた


遠く空導く 気高き堕天の大剣

薄闇にただ儚く

静けさに抱かれた空洞の姫君


ひとひらの粉雪消え行く想いを纏って

透明な感覚 美しく奏でる歌声のように

戦う少女に微笑みかける者はない

煌めく粉雪は 手のひらに溶けてゆく


胸に抱いた決意は

滲んでも失くさない永遠に――


「無明は、空洞たる自己を切り裂くように酷薄に揺らぐ。

自分が何者であるかを問い続ける日々。

創造性のないその繰り返しには、一筋の光明さえ見えず…」


「けれど…だからこそ、このままでは終われないっ!

――私は…!」


翳る瞳に届かぬ願いを刻んで

夜空に響く 咆哮は哀しき歌声のように

すべてが始まる場所は欠けた記憶の海

探し続けよう 幻想の花を


不確かな罪 咎を背負い生きる空導の姫君

過去も未来も強く縛られたまま


脆く歪んだセカイに

奪われし名も知らぬ感情

罪に血塗れた大剣を

仄紅く 掲ぐ虚ろな夜空へ――


「凍てついた夢を溶かすように、少女は優しく瞼を閉じた。

それは多分、自分の中に眠る、まだ失っていない何かを慈しむように。

罪に穢れ…、血に汚れ…、それでも解放の時をただ信じて。

手の届かない星空を掴むように、小さな祈りを」


「―――この手で、必ず終わらせる」