2009年8月3日月曜日

Baroque/SOUND HORIZON-Elysion楽園幻想物語組曲

「彼女こそ私のEなのだろうか…」


主よ私は人を殺めました

私はこの手で大切な人を殺めました

思えば私は幼い自分より、ひどく臆病な性格でした

他人と言う者は、私にはなんだかとても恐ろしく思えたのです


私が認識している世界と、他人が認識している世界

私が感じている感覚と、他人が感じている感覚

違うと言うことは、私にとって耐え難い恐怖でした

それがいずれ拒絶に繋がるということを、無意識のうちに知っていたからです


楽しそうな會話の輪にでさえ、加わることは恐ろしく思えました

私にはわからなかったのです、他人に會わせる為の笑い方が

いっそ空気になれたら素敵なのにと、いつも口を閉ざしていました


そんな私に初めて聲をかけてくれたのが彼女だったのです

美しい人でした。優しい人でした。

月の様にやわらかな微笑が印象的な人でした。


最初こそ戸惑いはしましたが、私はすぐに彼女が好きになりました

私は彼女との長い交わりの中から多くを學びました

違うと言うことは個性であり、他人と言う存在を認めると言うこと

大切なのは同一である事ではなく、お互いを理解しあう事なのだと


しかしある一點において、私と彼女は違いすぎていたのです

狂おしい愛慾の炎が、身を焼く苦しみを知りました

もう自分ではどうすることも出來ないほど

私は彼女を愛してしまっていたのです


私は勇気を振り絞り、思いのすべてを告白しました

しかし私の想いは彼女に拒絶されてしましました

其の時の彼女の言葉は、とても悲しいものでした

その決定的な違いは、到底分かり合えないと知りました


そこから先の記憶は不思議と客観的なものでした

泣きながら逃げて行く彼女を、私が追いかけていました

縺れ合うように石畳を転がる、Baroqueの乙女達

愛を呪いながら、石段を転げ落ちてゆきました


この歪な心は、この歪な貝殻は

私の赤い真珠は、歪んでいるのでしょうか?


誰も許しが欲しくて、告白している訳ではないのです

この罪こそが、私と彼女を繋ぐ絆なのですから

この罪だけは、神にさえも許させはしない


「ならば私が許そう」


「激しい雷雨。浮かび上がる瞳。

いつの間にか祭壇の奧に、

仮面の男が立っていた」

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