2009年8月3日月曜日

エルの絵本「魔女とラフレンツェ」/SOUND HORIZON-Elysion楽園幻想物語組曲

「如何にして楽園の扉は開かれたのか」


「鬱と茂る暗緑の木々。不気味な鳥の鳴き聲。

ある人裡離れた森にその赤ん坊は捨てられていた。

幸か不幸か、人目を憚る様に捨てられていたその子を拾ったのは、

王國を追われた隻眼の魔女、クリムゾンのオルトローズ。

銀色の髪に緋色の瞳、雪のように白い肌。

拾われた赤ん坊は、何時しか背筋が凍るほど美しい娘へと育った。

流転こそ萬物の基本。流れる以上時もまた然り。

二つの楽園を巡る物語は人知れず幕を開ける」


『ラフレンツェや…忘れてはいけないよ』


銀色の髪を風になびかせて

祈るラフレンツェ 死者の為に

小さな唇が奏でる鎮魂歌(レクイエム)

歌えラフレンツェ 永久に響け


時を食らうセルベンス 焼けた鎖のカノン

狂い咲いたリコリス 帰れないエリュシオン

蝋燭が消えれば渡れない河がある

始まりも忘れて終らない空を抱く


おのれラフレンツェ 悲痛な叫びのハーモニー

にくきラフレンツェ 呪恨の炎は燃ゆる


「儚い幻想と知りながら、生者は彼岸に楽園を求め、

死者もまた還りざる彼岸に楽園を求める。

彼らを分かつ流れ。深く冷たい冥府の河。

乙女の流す涙は永遠に盡きる事無く。

ただ、嘆きの河の水嵩は増すのみ。

少女を悪夢から呼び覚ます美しき竪琴の調べ。

悲しい瞳をした引き手 麗しきその青年の名は・・・」


『ラフレンツェや忘れてはいけないよ。

お前は冥府に巣食う亡者共の手からこの世界を守る為の最後の黄泉の番人。

純潔の結界を破らせてはいけないよ』


祖母が居なくなって唇を閉ざした

吹き抜ける風 寂しさ孤獨と知った

彼が訪れて唇を開いた

嬉しくなって誓いも忘れていった

それは手と手が觸れ合った瞬間の魔法

高鳴る鼓動 小さなベルを鳴らす

瞳と瞳見つめ合った瞬間の魔法

禁斷の炎 少女は戀を知った


一つ奪えば十が欲しくなり

十を奪えば百が欲しくなる

その炎別れを捨てても焼き盡くすまで消えはしない


『ラフレンツェや忘れてはいけないよ』


貴方に魅せるラフレンツェ 純潔の華を散らして

愛情も知らぬラフレンツェ 漆黒の炎を抱いて

彼は手探りで黄泉に繋がれた 獣の檻を外して

少女の中に繋がれた 冥府の底へ降りていく


「近づいてくる足跡。

やがてオルフェウスがエウリディケの手を引いて、暗闇の階段を駆け上がってくる。 

けれど少女は裡切りの代償として殘酷な呪いを受けた。

あぁもうすぐ彼は…彼は振り返ってしまうだろう」


「魔女がラフレンツェを産んだのか。

ラフレンツェが魔女が産んだのか。

物語はページの外側に―――」


「かくして楽園の扉は開かれた」

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