2009年9月23日水曜日

もしも世界に答えがあるなら/少女病-黎明ローレライ

『どれだけ探し歩いたのだろうか。
その場所に辿り着くまでに巡らせた想いは、
きっと彼女と過ごした時間を何倍にも増幅させていて。
でも、ようやく見つけ出した。
刻を止めたこの場所。あの頃と変わらぬ美しい姿――――――』

セピアの霧は神聖な 再会に相応しく思えて
濁って見えてた視界が光を探しあてた

この時を信じて何度命を断つことやめたのだろう
何も変わらず美しい 後ろ姿抱いた

聴かせてあげたい物語 あれから随分増えて
あの頃と同じようには 歌ってあげられないけど…

声が枯れても 思いは枯れずに
屈さぬ鋼の決意を 消さずに燃やし続け
二人の距離を 取り戻して…

長い時を経て変わった 僕の声に彼女は戸惑い
病気でもしたのですかと優しく気遣う

語ってあげたい物語 それより大切なこと
二人のこれからの長い 人生創っていくんだ

もしも世界に答えがあるなら
この愛こそが穢れなき 微かな曇りもない
死さえ踏み越え 揺るがぬモノ…

『彼女は肉体を失った影響か、僅かながらも瞼に光を感じることがあるという。
“この包帯をとって世界を見るときは、あなたと共に―――”
そう語る彼女の表情はまるで少女のように輝いていて。
その言葉は旅してきた茨の道を。時間を。
全ての苦労を忘れてしまうほどに何よりもうれしくて…。
“やっとあなたの顔をみることができる”
振り返り僕の顔を見たイヴは、訝しげに問いかける』

「あなたは……誰?
私の知っているあの人じゃ、ない――――」

『理想化され、彼女の中ではまだ若い姿で居るはずの青年はそこにはなく。
いるのはただ衰え、くたびれた老人だけ。
数十年という途方もない年月は、生きた側にだけ残酷に流れていた』

「私の前からいなくなって。
あなたなんて、知らない」

もしも世界に答えがあるなら
最期にはどうか救いを 刻んで残して欲しい
それが嘘でも 偽りでも
もしも世界に答えがあるなら
優しいものだと信じて 歩んできた旅路は
脆く砕かれ、意味をなくした

『老人は嘆き絶望し、何も語ることなく自らの命を断った』

「さようなら。僕の愛したイヴ」

「本当の彼はいつきてくださるのでしょう。
ずっと、いつまでも待ち続けますわ……」

『イヴはそう呟き、冷たい瞳で老人の屍を見下ろしていた――――』

rectitude/少女病-黎明ローレライ

『過去にあった事故の後遺症から、余命幾許もない女性。
目の見えない彼女が唯一自由に出歩ける広い庭園。
いつものように木々の声に耳を傾けていると、軽やかな青年の歌声が耳に飛び込んできた。
彼は幾つもの国を旅する旅人で、森から繋がるこの庭園に迷い込んでしまったのだという』

「ごきげんよう、美しいお嬢さん。
よろしければ、このまま続けても構いませんか」

静かな庭園 その中だけが彼女の
想像の及ぶ とても小さな鳥篭のよう

目の見えぬイヴ 夢見るのは 遠い外の世界
たった一歩が踏み出せない 恐怖が消せずに…

「もし君が心晴れるというなら、いくらでも求むままに、
旅でみた幾つもの物語、君へと歌うよ」
目的なく旅をしてきたけれど あどけなく微笑むイヴ
世界巡り君を見つけた この出会い運命だと思えるから――――

「君に世界を見せよう。時には歌で、時には言葉で。
見えないなんてことはないさ…。いくらでも描けるだろう?
今、君の頭の中に広がったもの。それが、世界だ」

彼女の屋敷で 新たな季節迎えて
いつしか二人は 心確かに惹かれあった

「私のために旅をやめてここにいてくれるの?」
不安隠せず問う彼女に 笑って答える

「もし君が一緒に行くというなら、もう一度旅するだろう」
でもねほら思うんだ ここに来てイヴに出会うため
僕は旅をしてたのかもしれない だからずっと傍にいて
君のための歌 歌い続けよう 季節が何度変わっても――――

二人に残されてる時間は多くないと知っても…
閉ざされた庭園で、婚約を誓い支え合った

『けれど、イヴに最期が訪れるのはあまりにも唐突だった』

「あなたの優しい声が好き。
きっと、柔らかな笑顔で歌ってくれていたのでしょう」

『イヴはそういって、視力をなくしたまま青年の顔を見ることも叶わずにこの世を去ることを嘆いた。
青年はただ落ち込んだ。
やがて、旅の途中で聞いた物語を思い出す』

「どこかにあるという“死者に会える場所”。
そこにいけば、きっともう一度イヴに会える」

「まだ聞かせたい物語は無数にある。
ずっとずっと、隣で寄り添っていても足りないくらいに―――」

I/少女病-黎明ローレライ

華は散り続けた 紅い雫堕とし
拒絶の声遠のく 虚ろに消えて

いっそ壊してくれたなら楽なのに――――

離さない…離れない… 穢れてく飽きるほど望まぬまま
戻りたい…戻れない… そんな場所最初から失って…
揺らされた…三日月の… 淡いその瞬きに照らされて
眠りたい…眠れない… 早く済ませて 眠らせて欲しい

夜は塗り替えられ やがて色を消した
痛みは増すばかり 癒える余地なく

私に飽きてくれたなら終わるのに――――

涙さえ…流れない… 感傷はいつの日か殺したから
終わりたい…終われない… 律動は激しさを失わず…
揺らされて…揺らされて… 何もかも 今はただどうでもいい
囚われた…この身体 洗い落とせぬ 刻まれた痛み

いつかここを抜け出せるのなら
行ってみたい場所が唯ひとつあるから…

憂いは傷口に飲み込まれて――――

離さない…離れない… 穢れてく飽きるほど望まぬまま
戻りたい…戻れない… そんな場所最初から失って…
揺らされた…三日月の… 淡いその瞬きに照らされて
眠りたい…眠れない… 瞳を閉じて祈っても届かずに

涙さえ…流れない… 感傷はいつの日か殺したから
終わりたい…終われない… 律動は激しさを失わず…
揺らされて…揺らされて… 何もかも 今はただどうでもいい
囚われた…この身体 誰も助けてなどくれない
楽になれる日は来るの?

『欲望で着飾った終わりなき夜。
捧ぐことを強要された日々。
逃れられぬ極彩色の宴。
これが現実。
変えようのない残酷なREAL』

2009年9月12日土曜日

絶対零度/少女病-黎明ローレライ

寒さに凍える 季節を問わず今も
男は孤独に 一人膝抱えた

暖かさというものを 感じたことはなく
小さな震えは 眠るときでさえ止まらず

全て灰色でも 仕方ないと戒めていた
捨てられた僕には与えられぬ 何より遠いものだ…

ほんの行き違い 些細な軋みから
他人の命を 奪い殺ってしまう

支え抱く体から 伝わり触れる血は
はじめて感じる とても暖かな温度で

「これが暖かさか」 恍惚から震えが止まる
暖かさと共にあると聞いた “感情”とはこの思いか―――?

数えきれないほど 多くの血を奪って生きる
自らの温度と存在をも確かめてみた いつしか

狂っていく感覚さえ麻痺して
緋の熱量 もうそれだけ唯求めて 彷徨いゆく

「その感情は、絶望の声と共にあった。
壊れているのは自分か、それとも世界か?
そんなことに興味はなかった。
欲しいのは、震えをとめてくれる優しさだけ――――」

魔法仕掛けのリゼッタ/少女病-黎明ローレライ

人里離れた地に安寧を求め 隠れるように生きていた二人

忙しげに 研究を続ける隠者
ひたすら苦しげに 眠ることも惜しむほどに

その主人に 仕えるは魔法仕掛けの
少女の形した 精巧なる人形

魂持たぬツクリモノ けれどそんな扱いを受けることなく
娘のように愛され 少女人形は主を支えていた

ふたりともに向かい合って過ごす瞬間は多くないけど
食事の時間だけはたくさん話せた 一日の中特別なMemory
絵本を読み意味がわからず聞く
「愛とはなんですか?」
どんな疑問にさえも 丁寧に答えくれた主がはじめて戸惑う――

その言葉の意味はそれぞれ 人により異なるという
「リズにとっての愛は?」 答えはわからずに…

「次の休日には、街に買い物にいこうね」

『主にそう告げられたリズ。
隠者が以前に休日をとったのはいつだっただろう。
それは遠い昔のことのようにさえ思えて。
それでも健気に、その日が訪れるのを待ち続けた―――』

「僕にとっての愛とは、その人のために、
何かを見返りなく与えることなのだろう」

主は深い戸惑いを隠しきれず 懸命にそっと囁く
「たとえば、それは君に命吹き込んだように」と

大きな手で撫でてもらうことは とても嬉しいけど
その手に力はなく疲労を感じて 支えきれない無力を呪った
なんのための研究かも知らない
無知で莫迦な私
どこかへ連れていって なんてこと言わない
ただもう少し休んでくれたら――――

考え込む背中―――そこに寄りかかるだけではなくて
少しでも頼ってもらえる存在になろう…

『ずっと根を詰めて休むこともせずに没頭した報いか、
力尽きて倒れる隠者の寝顔は、解き放たれたように安らかに』

『隠者の研究は、このままでは長くは持たず、
動きを止めてしまうかもしれない少女のためのもので―――。
彼女に眠りと死の違いはわからず、ただ主が起きるのを待ち続けていた…』

「こんなにゆっくりと眠ってくださるのはほんの久しぶり。
お仕事が一段落ついたのかしら?
次の休日には、一緒に買い物にという約束。
その日も遠くないのかもしれない。
どんな服をきていこう。
わかった気がした。
私にとっての愛とは、その日を待ち続けること。
ふたりで過ごす休日。きっと、素敵な一日になる――――」

黒雪姫[Noire Neige]/少女病-黎明ローレライ

「光を通さぬ漆黒の髪。
感情を閉じ込めた昏い瞳。
国の唯一の後継ぎとして寵愛を受けた彼女は、心まで暗闇に染められているかのようで…。
黒雪姫[Noire Neige]と呼ばれる少女は誰にともなく問いかける。
“この国で一番美しいのは、だあれ―――?”
答えを誤ることは、赦されない。
従うことだ」

「生きて、いたいのなら」

誰もが囁くの あなたこそが
この国で一番美しいわと

だからねぇ―――私よりも綺麗な存在なんて
あってはならない いらないの

積み上げられた犠牲者達 罪深き 亡骸
夢見がちな黒雪姫[Noire Neige]
漆黒に赤い死の口紅を引く……

壊して… 壊して ねぇ
どんな悲しそうな 死に顔だって
燃やしてしまえば 明日にも忘れてしまうわ

呪われし忌み子と持て余され 黒雪姫は両親に決断させる

「あの娘は、呪われてる。私たちのこの国を委ねることはできない」と

最期の刻は深い森で 凄惨な事故を
装われて黒雪姫 その命若くして閉ざされる

「どうして…、どうして、ねぇ?
一番美しい私こそ誰より幸せになれる権利を持ってるでしょう―――?」

「もう一度新しい子を、つくりなおせばいいさ」と
失敗作は殺された

上辺だけでも愛注がれ 花のように育ち
砕け散った黒雪姫 死してなおどこまでも美しく…

ずっとずっと 永久に咲き誇ろう
少女の墓標 その周りには黒き花どこまでも広がり
存在を誇示し続けるだろう

「新しく生まれた赤子は真っ白な髪に、雪のような白い肌をしていた。
優しく朗らかな子に育ち、いつしか白雪姫[Blanche Neige]と呼ばれるようになる。
よく晴れた日。少女は家族で森へ散策にと出かけた。
奇しくも黒雪姫が命を落とした墓標の近く。
白雪姫は、普段と変わらぬ優しい笑顔で両親に問いかける」

「この場所で、また私を殺すの?
何度やっても無駄なのに――――」

「時が経ち、少女はいつしか“魔女”と呼ばれる存在となる。
やがて国は滅び、その後には黒い花の咲き乱れる、深く仄暗い森だけが広がったという…」

meaning of death/少女病-黎明ローレライ

あれれ貴方ここで何をしてるの?
迷子なのかな?泣きそうな顔して

キミの瞳はまだ生を宿して
ここに来るのは まだ先じゃないかな?

おいでなさい遊んであげるわ
ちょうど退屈してたし
教えてあげる

小さな玩具の箱をひっくり返せば ほら見てみて!
こんなたくさん語る価値のない ガラクタみたい
そんなお話たち溢れてる
でもたまに煌々と光る物語があるの……

ボクの好みは滅びの物語
そこへと至る 過程が美しい
私が好きなのは 甘く散る恋
二人の恋物語と 重ねてみてしまう

ここには全てがあるのだろう
それは幻想を孕む
禁断の果実

小さな玩具の箱をひっくり返せば ほらこんなに
哀れむほどの価値さえ持たない ガラクタだらけ
そんなお話たち
掘り熾すことさえもされずに眠る物語もあった……

「ねぇ、遊んだらお家へ帰る?
それとももう死んじゃう?」

あの時迷い込んだ 幼い兄妹 二人のように

死へと逃げ出すことは 簡単なことさ
けれどそれは 明日でもほらできることなんだ
僕らには本当の意味の明日はもうこない
こうやって過去辿り 今も生きてるフリをして―――

「誘う彼らは、この場所に飲み込まれた存在。
幼く。弱く。愚かに。
認められぬ恋に酔い、未来を閉ざして。
けれど、退廃の向こう側にあったものは―――」