2009年8月5日水曜日

黄昏の賢者/SOUND HORIZON-Roman

「彼の名は『賢者』(Savant)――

正確にはその呼び名も通称…本名は全く以って不詳…

私が初めて彼と出逢ったのは…ある春の日の黄昏…寂れた郊外の公園だった……」


「今晩和(Bon soir)――

Mademoiselle、そんな浮かない顔をして何事かお悩みかな?

先ほどから君がその噴水の周りを廻った回数は11回。

歩数にしておおよそ704歩、距離にして実に337メートル。

愚かな提案があるのだがどうだろう?

私で良ければ君の話し相手になりたい」


「まずは誰もいない→ 其れが零(zero)だ…

其処に私(moi)が現れた→ 其れが壱(un)だ…

そして君(toi)が現れた→ 其れが弐(deux)だ…

単純な数式にこそ ←真理が宿る…

そんな容易なことに0301え自らを閉ざして

気付けない時もあるのだ……」


「やぁ、御機嫌よう(Salut)――

Mademoiselle,先日の悩み事に対する解答は出たのかな?

君と別れてから今日で丁度一週間。

時間にして168時間。分にして10080分。秒にして604800秒。

と言っている間にも、23秒が過ぎてしまった。

今日も君の話し相手になりたい」


「朝と夜との地平線(horizon)→ 其れは弐(deux)だ…

時の王(roi)が眠る墓所→ 其れは参(trois)だ…

煌めく永遠の星屑→ 其れは伍(cinq)だ…

単純な素数に0301え ←真理は宿る…

どんな容易なことに0301え自らを閉ざして

気付けない事もあるのだ……」


「君の哀しみを因数分解してみようか?

幸福の最大公約数を求めてみようか?

涙を拭って…0301ぁ…お立ちな0301い…

君の途はまだ続くのだから……」


「なるほど(En effet)――

産むべきか ←→ 産まざるべきか…

それが最大の…謂わば問題だ…」


「歓びの朝も…哀しみの夜も…全ては君の物…

未見ぬ者へ…繋がる歌物語…詩を灯す物語…」


「『風車』が廻り続ける度に、『美しき』幻想が静かに紡がれ、

『焔』の揺らめきの外に、『腕』を伸ばす愚かな者達は、

『宝石』をより多く掴もうと、『朝と夜』の狭間を彷徨い続ける。

『星屑』の砂の煌めきにも、『葡萄酒』は仄甘い陶酔を魅せ、

『賢者』が忌避する檻の中から、『伝言』の真意を彼等に問うだろう。

『天使』が別れを告げし時、『地平線』は第五の物語を識る」


「繰り返えされる『歴史』は『死』と『喪失』。

『楽園』と『奈落』を廻り『少年』が去った後、

そこにどんな『ロマン』を描くのだろうか?

傷つく事が怖いかね。失う事が怖いかね。信じる事が怖いかね。

だからこそ私は そんな君の話し相手なりたい」


「君が来た朝を後悔するなら…

更なる痛みを産むべきではない…

君が行く夜を肯定するなら…

その子もまた《人生》を愛すだろう……

お孃0301ん(Chloe)――君の哀しみを因数分解してみようか?

幸福の最大公約数を求めてみようか?

埃を払って…0301ぁ…お発ちな0301い…

君の旅はまだ続くのだから……」


「0301ようなら(Au revoir)――

Mademoiselle、もう心は決まったようだね。

ならばさぁ、胸を張ってお行きなさい。君は君の地平線目指して」


「Merci, Monsieur Savant」


「探しだぞ Christophe」


「其処にロマンは在るのかしら?」

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