2009年8月1日土曜日

黒雪に散る天人花/少女病-葬月エクレシア

『降り積もる黒雪は、凶兆の嚆矢。

その雪の色をも視ることができない盲目の少女は、

ただ声に誘われるまま、白の教会へ……

さあ、歌いましょう?全てを取り戻すために──』


凍てついた 黒い雪が舞う

盲目の少女はただ 傷跡を隠すように

余韻に満たされた想い 残像を宿して

閉ざされた 宵闇の世界照らした

微かなヒカリ 目指して


失われた 幾千の理想(ideal)

壊れた瞳に消えた

手の届くことのない現実(real)求めて

彼方にまで 往け──


残酷な 遠い蜃気楼

跪く少女にだけ 黒雪の果て誘うように

緋色に輝いた月に 幻想を宿して

奪われた 未来への希望示した

小さな声を 手繰って


救いのない 幾千の物語(story)

その一欠片でなんて

終わらない この先のヒカリ 辿って

闇を抜けて……


『雪の中健気に咲く小さな天人花(ミルテ)。

少女と同じ名を持つその花は、弱々しく、今にも吹き飛んでしまいそうで……。

少女は、その花を。そして自らを強く掻き抱くようにして、空を仰いだ』


失われた 幾千の理想

壊れた瞳に消えた

手の届くことのない現実 求めて

彼方にまで さあ──


『耐えるように咲いていた花も雪に溶けるように散っていく中、少女はやがて力尽きる。

涙を凍らせたまま、声もなく叫ぶように』


「夢見たヒカリに手を伸ばしながら……」


「あれ、もう死んじゃうの……?」

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